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東京高等裁判所 平成6年(ネ)4496号 判決 1995年6月28日

控訴人(被告)

池田芳晴

被控訴人(原告)

河野良雄

ほか一名

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人は、被控訴人ら各自に対し、金一〇八六万一〇五八円及びこれに対する平成二年一二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを一〇分し、その四を控訴人の負担とし、その余を被控訴人らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

本件控訴を棄却する。

第二当事者の主張

原判決事実摘示の「二 当事者の主張」欄記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり補正する。

一  原判決六枚目裏一行目の末尾に「すなわち、不法行為による損害賠償の額は、不法行為時を基準として算定するのを本則とすべきところ、本件事故は、平成二年一二月一四日であるから、いまだ経過していない平成三年の賃金センサスを使用し、しかも本件事故発生日である平成二年一二月一四日から遅延損害金の支払いを求めるのは不当である。また、亡周二は、本件事故当時、高校在学中であつて、大学進学の高度の蓋然性がないのであるから、大学卒賃金センサスの年収額を採用するのは誤りである。」を加える。

二  原判決七枚目裏二行目の「注視し」の次に「て徐行し」を加える。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  当裁判所は、被控訴人らの本件請求は各一〇八六万一〇五八円及びこれに対する平成二年一二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるものと認める。その理由は、原判決の理由説示を次のとおり補正したものと同一であるから、これを引用する。

1  原判決一三枚目表二行目の「甲第三号証」の次に「、第四号証」を、同五行目の「第二二号証」の次に「、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二五号証、乙第五号証、第一四号証」をそれぞれ加え、同裏四行目の「一五〇度」を「三〇度」に改め、同行の「折れ」の次に「、その曲がり角を角きりした状態になつ」を、同九行目の末尾に続けて「本件事故現場付近の道路は、最高速度毎時三〇キロメートルに規制されている。」をそれぞれ加える。

2  原判決一四枚目表七行目の末尾に続けて「なお、本件事故当日の天候は晴れであり、河野車の前照灯は点灯され、手前約二〇メートル付近から控訴人車を発見することが可能であつた。」を加え、同八行目から九行目にかけての飲酒しよう」を「元請である大永建設工業株式会社の事務所に打合せのため立ち寄ろう」に改め、同一〇行目の「離れ」の次に「たが、訪れた同事務所で飲酒をすすめられた後」を加え、同裏六行目の冒頭から同一五枚目裏一一行目の末尾までを「2 以上の認定事実によれば、控訴人は、夜間、ゆるくカーブした片側一車線の坂道の曲がり角付近に、片側車線の大部分を塞ぐ形で車線左側に寄せて控訴人車を駐車したところ、その駐車場所付近はほとんど照明がないのであるから、駐車灯を点滅させるなどの追突防止措置をとるべきであるにもかかわらず、これを怠り漫然と駐車禁止区域に控訴人車を駐車した過失がある。他方、亡周二にも、夜間であり前方左側の電柱によつて前方の見通しが悪かつたとはいえ、河野車の前照灯を点灯しており、前方を注視していれば、約二〇メートル手前から控訴人車を発見できたものであるから、本件事故現場付近の道路における最高制限速度あるいは原動機付自転車についての最高制限速度毎時三〇キロメートルの制限内の速度で走行し、前方注視を怠らなかつたとすれば、本件事故を未然に回避し、これを防止し得た可能性を否定し難く、亡周二に、制限速度を大幅に超過して走行した過失若しくは少なくとも運転者として最も基本的な義務である前方注視義務を怠つた過失があるというほかない。そして以上の諸事実によれば、双方の過失割合は、控訴人が六、亡周二が四であるとするのが相当である。」に改める。

3  原判決一六枚目表六行目の末尾に続けて「なお。控訴人は、本件事故当時の平成二年の賃金センサスを使用すべきであり、また、亡周二が大学に進学する高度の蓋然性はない旨主張する。しかし、被控訴人らは、亡周二が大学を卒業すると想定される二二歳(平成七年四月)からの逸失利益を請求しているところ、賃金センサスによる逸失利益の算出は、事故にあわなければ得られたであろう収入額を推計するものであるから、賃金が毎年上昇していく傾向にあることに照らすと、亡周二の大学卒業前の平成三年の賃金センサスを使用することは何ら不当なものではないし、また、前掲証拠によれば、亡周二が四年制大学に進学する高度な蓋然性があつたものというべきであるから、控訴人の右主張は採用の限りではない。」を加え、同裏一〇行目の「三〇〇万円」を「二〇〇万円」に改める。

4  原判決一七枚目表一行目の「原告ら」から同二行目の末尾までを「被控訴人らに生じた損害(ただし、弁護士費用を除く。)は、計六六二〇万三五二八円となるところ、前記の過失割合に従つて過失相殺すると、控訴人の負担すべき金額は、計三九七二万二一一六円(円未満切捨て)となるが、前記のとおり、被控訴人らが自動車損害賠償責任保険から各一〇〇〇万円の支払を受けているから、控訴人の負担すべき右金額からこれを控除すると、一九七二万二一一六円となり、これに前記認定の弁護士費用二〇〇万円を加えると、計二一七二万二一一六円となる。したがつて、被控訴人らの損害は、各一〇八六万一〇五八円となる。」に改める。

二  以上によれば、被控訴人らの本件請求は、損害金各一〇八六万一〇五八円及びこれに対する本件事故の日である平成二年一二月一四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるところ、これと異なる原判決を右の限度で認容すべく変更し、その余の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 清水湛 瀬戸正義 西口元)

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